デベロッパー ストーリー

「クロッシーロード」はなぜユーザー獲得やマネタイズではなくシェアと継続率にこだわるのか

2014年2月10日。モバイルゲーム市場にとっては歴史的ともいえる、ある事件が起こります。 この日、インディーゲームデベロッパーのDong Nguyen氏が手がけ、9か月で5,000万回もダウンロードされた伝説のアーケード モバイルゲーム「Flappy Bird」がApp Storeから姿を消します。理由は、このゲームの中毒性を開発者自らが危惧したため。広告収益が1日に5万ドルもあったにもかかわらずです。 この同じ日は、モバイルゲーム開発会社Hipster Whaleの共同創設者、Matt Hall氏とAndy Sum氏にとっては始まりの日でした。ほかのモバイルゲームデベロッパー達が我先にと躍起になって「Flappy Bird」の類似タイトル作りに走るなか、オーストラリア、ブリスベン拠点のHipster Whale社の2人組は別のアプローチを考えます。それは、「Flappy Bird」のようなゲームの人気の秘密を探ること。 それがどのような結果をもたらしたかは、ご存じの方も多いでしょう。Hipster Whaleの無料ゲーム「クロッシーロード」は配信開始後90日で600万ドル以上のビデオ広告収入を達成、2014年11月のリリースからずっとApp Storeのランキングでトップの座を堅守しているのです。「クロッシーロード」のサクセスストーリーは2015年のインディーゲーム業界で最もホットな話題になりつつあります。Hipster Whale社のHall氏に“枠にとらわれない考え方”、“リスクを恐れないこと”、“ユニークでいること”によって、どうやって成功を手に入れたのかをインタビューで明かしてもらいました。 Pepe Agell(筆者、以下A): 「Flappy Bird」がマーケットから撤退したとき、数多くのデベロッパーがコピーゲームの開発に奔走しましたが、「クロッシーロード」の製作はまったく別のアプローチを取りましたね。具体的にはどんなプロセスだったのですか? Matt Hall氏(以下H): あのゲームがなぜあれほどの人気を博していたのか、その理由が知りたかったんです。そして、人気の秘密がゲーム性の高さにあると気づいたのです。「Flappy Bird」はゲームの本質を突いていて、よく作りこまれていた。そして、誰もが話題にした。口コミでかなり広まっていったんです。開発者が意図したかどうかはともかく、ソーシャルの要素があったといえます。そしてゲームプレイが楽しくてしょうがなくて、ベッドにへばりついてやる人が続出した。 ゲームプレイに相当なスキルが必要だったのも重要なポイントです。「Flappy Bird」で50点取れれば、相当な熟練プレイヤーなわけです。 それで、こういった要素を自分達が開発しているゲームに盛り込むことを考えました。友達に思わず話してしまいたくなるアーケードゲーム、時間をかければその分だけスキルがあがる、挑戦しがいのあるゲームです。 A: 「Flappy Bird」でソーシャルの可能性を感じて、ソーシャル要素の強い「Crossy Road」を作ることにしたのですか? H: ソーシャルゲームを作るというより、そのゲームの話をいろいろな人とシェアしたくなるような要素がしっかりあるものを作ろうと思いました。たとえば、個性的なおもしろいキャラクターをたくさん登場させるなどです。プレイヤーの興味を引くようなキャラクターを用意することで、それぞれのキャラクター情報をプレイヤー同士が交換するようになりました。おもしろい要素があれば、人はそれを誰かと共有したくなるんですね。 A: 一方、新規ユーザーの獲得に投資することはしなかった。ユーザー獲得(UA)はビジネス戦略として欠かせないという見方もあるようですが。それについてはどう思われますか? H: ユーザー1人あたりの収益額を増やそうとするより、みんなが好きになる人気の高いゲームを作りたかった。それが原動力だったんです。それで、それを邪魔する要素はとことん排除していきました。ユーザー獲得に投資したなら、それに見合うだけのARPUが得られなくては採算が合わないでしょう。そこに焦点を絞ると、作れるゲームシステムも限られてきます。我々はそういったものに縛られない、新しいゲームを作りたかったんです。 A: 開発初期の段階では、マネタイズ戦略についての話はあったのですか? H: 開発を始めて6週間くらい経ってから(開発プロセスのちょうど中盤あたり)、マネタイズの話になりました。最初はほかの多くのゲームと同じようにコインを売ろうかとも話していたんですが、キャラクター要素を掘り下げて考えていくうちに、このゲームはファミリー向けとしてウケるのではないかという思いが強くなっていきました。 H: そうなると、コインをアイテムとして売るのがしっくりこなくなった。自分の家族を考えてみても、私も娘にコインを買ってあげたりはしないですから。それで別のオプションを考えて、キャラクターを直接販売するというアイディアが浮かんだんです。コインよりももっと長い間手元に置いておけるし、愛着も湧くでしょう。 A: 数字的にはどんなところに重きを置いたのでしょうか。 H: 自分達がフォーカスしたのは継続率です。今日もプレイして、同じプレイヤーが明日もプレイする。それを一番に重要視しました。そのためにはかなりの労力を費やしましたよ。その甲斐もあってか、ゲームのテスト段階で65%というかなり高い継続率が出ていました。それで、これはうまくいきそうだという感触を得たんです。継続率以外の統計データは見ていません。ユーザーの課金額を上げることにも興味がない。とにかく1人でも多くの人が楽しんでくれるゲームを作ること、それに専念しました。 A: 他と違ったアプローチといえば、製作期間を通常よりかなり短い12週間と決めていたのもおもしろいと思いました。完成日を決めることでクリエイティブなプロセスに拍車がかかるなどの利点があったのでしょうか? H: いやいや、当初の予定は6週間だったんですよ(笑)。だから、コストも予算内におさまったとは言い難い。それでも12週間は製作期間としては短いですよね。厳しい納期を自分達に課すことで製作プロセスを加速させることはできたと思います。このゲームの製作には勢いが大事だったんです。自分が今何をしているのかを立ち止まって考えてしまうと、そこで手が止まってしまうんですよ。我々はプロジェクトをできるだけ早く完成させてこのゲームを世に出したかった。リリース日をタイトに決めていたことでスピードアップできたことは確かですね。 「リワードビデオとゲームがうまく統合されているケースを初めて見たのが『Disco Zoo』でした」 –…

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